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…… 台  所 ……

اَلسَّلامُ عَلَيْكُمْ

アッサラームアレイコム
 (あなたに平安を)



 
 日本では台所・キッチンと言われる食事を作る所がありますが、平屋・2階屋のカシュガル・ウイグル家庭には、特に決められた調理場所はありません。
 多くは中庭の一部にLPガスボンベとコンロを設置し、縁台で食事の準備をしているようです。
 しかし、アパート・マンションは調理をする場所があり、ほとんどは都市ガスが供給されています。

 平屋にも都市ガス供給の計画は以前からあるのですが、各戸は都市ガス設置に醵金しなければなりませんので、生活苦のため負担金を支払えない家庭が多い現状から見ますと、妻宅に都市ガスが供給されるまではかなりの時間が掛かりそうです。


 カシュガル・ウイグルの大多数は低所得者層です。
 電気や上・下水工事、行政の指示でする各自宅前路上修理・拡張工事をするにも負担金が要りますので、日々の生活でさえ青息吐息の現状に追い討ちが加わります。

 住民の基本的生活を保障するのが行政の役目ですが、カシュガルでは最低限の生活でさえ住民の自己責任とするのが現実のようです。
 ですから、貧乏人が地方行政に窮乏を訴えても埒が明かないのは当たり前と言えます。

 そんな行政の隙間を埋めるものとして、ムスリム(イスラーム教徒)の地域共同体相互扶助があります。
 どんなに貧しくとも助け合いの精神で苦難に打ち勝つことを信じて現世を生き抜いているムスリムの拠り所です。

 ムスリムはアッラーの庇護の下、善行を積むことによって来世の幸福を信じますので、何処かで誰かの困り事があれば自己に見合った方法で手助けしなければなりません。

 ムスリムの生き方は、まるで、宮沢賢治の 「雨ニモマケズ」 にあるごとくです。


 2階屋の妻宅には珍しく台所があります。
 妻が2002年に日本から一時帰国した折、台所と水洗トイレ兼シャワー室を設けました。

 砂塵嵐が落ち着いて来た5月中旬、白壁も塗り直して気分一新したところで、妻が、「気候も良くなったので、今日から秋まで中庭で調理をしますから」 と宣言しました。

 中庭調理は雨降り時に難儀をしますが、妻宅はトタン製庇で覆われていますので雨が降っても心配無用で、5月20日の大雨でも雨粒が降込むことはありませんでした。 (24)、(25)参照

 妻は以前から欲しかった耐熱ガラスのガステーブルを購入することも決めてしまっていました。
 ガステーブル価格は、いつもの値引き交渉の末に310元(約5000円)で成立しました。
 魚焼きグリルが無いためか日本の重厚なものではなくすっきりした薄型です。

 5月の予算外出費としましては、デスクトップパソコン(3150元=約5万円)に次ぎます。

 LPガス入りボンベは50~80元(約800~1300円)で、妻宅では毎日3度の食事調理で1ヶ月持ちません。
 冬場はLPガスの消費が少ないため安く、夏場は消費が多いため割高になります。
 5月は53元で購入しましたが、6月は63元でした。
 どこの家庭でも1つ予備があります。

 貧しい家庭では廉価な石炭燃料を使い、中庭に設置した石炭ストーブで調理します。
 農家では薪が主流です。

 日本ではLPガスの家屋内設置が禁止されていると、30年以上前に沖縄・西表島で暮らしていた時に販売員から聞きましたが、新疆ウイグル自治区(中国他地域は不明)では建造物構造上からか禁止されておらずガステーブルの傍に置いています。

 98年夏から3年ほど暮らしたウルムチ(新疆ウイグル自治区首都)のマンションでもLPガスで室内設置でした。

 カシュガルの平屋ではほとんどが中庭にLPガスを置いているため、ガス爆発の危険性はきわめて少ないと思われます。

 LPガスは移動が自由なため、調理場所を選びませんが、カシュガルでは将来、平屋・2階屋にも都市ガスが供給されますので、妻宅のような決められた調理場所(台所)が出現し、ウイグルの生活に変化をもたらすかも知れません。




写真1: 夏場の調理場所を中庭に設置。縁台代わりのベッドで食事準備する
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写真2: カシュガル郊外の妻親戚農家のカマド。冬は左側の石炭ストーブで調理する
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写真3: 農家の湯沸し専用カマド。土台は洗面器が使われている
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江上鶴也
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# by oghuzkahan | 2007-06-14 10:23