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…… 杏(アンズ) …… 

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 5月の末からカシュガル各地に杏(アンズ)売りの姿が現れました。
 7月初旬まで、色んな種類の杏が売られます。

 6月初旬、カシュガル中心地から車で20分ほどの距離にあり、カシュガル鉄道駅を経て空港へ向かう道路傍に位置する、カシュガルの果物郷と言われる農村の妻親戚農家を訪問し、最盛期の杏狩りを楽しみました。

 妻親戚農家は果樹園を持ち各種果樹を栽培しています。
 私の好きな緑色ブドウはやっと実を付けたところでしたので、1ヶ月後のお楽しみとなりました。

 杏は木を揺らしただけで容易に落下します。
 杏の木の辺りには自然に落下した杏が多数ころがっていました。

 日本でしたら人間より先に野鳥や小動物がやって来て横取りするのでしょうが、ここでは横取りするのは人間だけのようですから、果樹園の門扉はしっかり施錠してありました。

 杏は食べ放題で、杏にこびりついた砂塵を洗い落とすこともなく食べまくりましたので、12時間後、苦しむことになりました。

 当地の果物は、メロン、スイカ、ザクロ、桃 以外は皮ごと食べます。

 妻は、料理に使うからとまだ熟していない青い杏も強引にもぎ取っていました。

 夕方、妻宅に戻ってからも、妻の静止を聞かず、お土産にもらった杏を頬張り舌鼓を打ちました。

 結果、夜半からお腹の調子が悪くなり、数日下痢が続きました。
 杏を食べると下痢をする人もけっこういるようです。
 そのためか、数年前から息子は杏を口にしなくなりました。

 ウイグルはナンと一緒に果物を食べるとお腹を壊さないと言います。
 
 一見、アーモンドに似た杏の種の仁を杏仁と言い、鎮咳薬、去痰薬になります。
 
 杏仁を粉にしたものを寒天で固めて作ったデザート、「杏仁豆腐」 は中国内地で食したことがありますが、ウイグルは杏仁を使った食べ方はせず、アーモンドと同じように杏仁をそのまま食べます。

 歯の丈夫なウイグルは、杏を食べた後、種を歯で割り中の杏仁を食べます。
 日本で言えば、梅干の種を歯で割って中の仁を取り出すようなものですが、真似をすると歯が欠けますので十分ご注意を。
  
 杏をドライフルーツにしたものも年中食します。

 夏はその乾し杏を氷水に浸した水が売られます。

 ですから、当地では年中、杏を楽しんでいます。

 しかし、ジュースにすることはありません。
 ジュースにするのはザクロだけです。

 新疆ウイグル自治区は大乾燥地帯ですから、果物は糖分が凝縮されており甘味が強く、一度味わうと虜になってしまいます。

 100%ジュースやジャムにして中国内地や外国に売り出せばと思うのは他所者の発想でしょうか。


 5月末、来訪者が来たことを示す、妻宅門扉の呼び鉄輪がガチャガチャと鳴りましたので門を開けましたら、若い女性が杏を盛った皿を手にして立っていました。
 妻が応対すると、娘さんは皿を置くなり帰って行きました。

 娘さんは斜め向かいのお嬢さんとのことでした。

 妻が夜明け前礼拝後、自宅前路上を掃除していますと、娘さんのお父さんが籠に入った杏を持って帰って来たところに出会ったそうです。

 妻宅近くにあるカスカン通り(職人街)では早朝に籠入り杏を売り出します。

 カシュガル・ウイグルの習慣として、自宅に果物など持ち帰る時にご近所の誰かと出会って見られてしまいますと、その相手にお裾分けしなければならないとのことです。

 妻が娘さんのお父さんが杏を持ち帰るところに出会い杏を見てしまいましたので、娘さんが杏のお裾分けを持って来たという訳です。

 後日、私と妻が籠入り杏を持ち帰るのをご近所の女性に見られてしまいましたので、慣習通りにお裾分けしました。

 夏場ですと、スイカやメロンを一度に何個も買いますので、搬入を見たり見られたりしますが、スイカやメロンのお裾分けの遣り取りは少ないようです。




写真1: 5月末から一斉に杏が出回った
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写真2: 乾し杏で味付した冷たい水売り
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写真3: 籠入り杏を選り分ける。ご近所に見られてしまったのでお裾分けした
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江上鶴也
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by oghuzkahan | 2007-06-19 18:20

(27)


…… ウイグルナイフ …… 

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 カシュガルからヤルカンド、ホータン方面へ向けて車で1時間ほどの距離に、ウイグルナイフで有名なインギサ(英吉沙)があります。

 妻宅近くのカスカン通り(職人街)には、旅行者向けのインギサ・ウイグルナイフ(英吉沙小刀)を売る店もあります。

 カシュガルが古来よりシルクロードの要衝として知られた一因は、良質の鉄が採れるインギサが近郊にあったからと想像するに難くありません。

 ウイグル語で鉄を 「トムール」 と言い、男性の名前にも使われます。

 インギサ・ウイグルナイフの大消費地は言うまでもなくカシュガルです。
 しかし、最近ではナイフ類の消費がめっきり減ってしまい、かつて職人街で刃物類を扱っていた店主は、旅行者向けの土産物屋に商売替えしてからの方が収入になると話してくれました。

 ウイグルナイフの消費が落ちた大きな原因は、民俗文化としてウイグルの成人男性が腰のベルトに鞘付きナイフをぶら提げていたのを、10年ほど前に凶器にもなるからとナイフ携帯が禁じられたからです。

 それ以来、ウイグルナイフは調理場の片隅に置かれ、女性が調理用に使うための刃物として家庭内に閉じ込められてしまいました。

 妻宅にもウイグルナイフが2本あり、調理用ナイフとして使用しています。
 妻は日本滞在中、包丁は使い辛いからと果物ナイフで調理していました。
 妻の影響からか私も包丁は使わず、もっぱら百円ショップで購入した果物ナイフを使うようになってしまいました。


 私が子供の頃に見たアメリカのテレビドラマで、カウボーイたちがパンや肉を切るのみならず、フォークやスプーン代わりに実に器用にナイフを使っているのが格好良く、いつか自分もナイフを片手に食事をしたいと憧れていました。

 大学浪人時代にバックパッキングをするようになり、サバイバルナイフを購入したものの使う機会がほとんどなく、テレビのカウボーイのようには格好良く使いこなせることもありませんでしたので、できもしない真似は止めました。

 その後、スイスアーミーナイフやフランスオピネルナイフを使ってみましたが、ナイフ単体よりもナイフ、スプーン、フォークなどが付いた五徳ナイフが実用的で重宝するため、海外放浪にも使い勝手の良い安物の五徳ナイフを携行するようになりました。

 妻宅にも私が使った30年以上前の五徳ナイフがあるのですが、今では使うことは全くなく、若い頃、共に旅した思い出の品として錆びるに任せています。


 85年春、ウイグルたちが腰からウイグルナイフをぶら提げている姿を見て、かつてテレビドラマのカウボーイのナイフ使いに痺れていた頃を思い出しました。

 早速、小振りのウイグルナイフを腰にぶら提げては悦に入ったのですが、慣れないために邪魔になって仕方なく、終いには布製ショルダー軍鞄に入れて持ち歩くようになりました。

 買ったウイグルナイフは、スイカやメロン、硬くなったナンを切るくらいしか用途がありませんでした。

 ウイグルナイフは鉄製ですので錆び易く、また切れ味も悪くしょっちゅう研ぐ必要があるため、重宝する五徳ナイフには勝てず、やがて手にすることもなくなりました。


 インギサに並ぶ新疆のナイフ産地が、カシュガルとウルムチのほぼ中間地点に位置するシャヤー(沙雅、クチャー南方)です。

 シャヤーの折り畳み式ウイグルナイフ(沙雅小刀)が今様で実用的、デザイン的にも好まれ、また小型なため携行にも適しているために広く使われるようになりました。

 シャヤーの折り畳み式ウイグルナイフは、中国内の各種博覧会に新疆を代表する名産品として出品されて好評を博されました。
 
 従来のウイグルナイフが不調に陥っていたインギサでも、シャヤーの折り畳み式ナイフを真似て生産するようになりました。

 折り畳み式ウイグルナイフは、日本の 「肥後の守」、フランスの 「オピネル」 にも勝るとも劣らない逸品だと思います。

 私はこの折り畳み式ウイグルナイフブランドを通じて、ウイグルが世界に名を馳せることができるのではとも思っています。


 99年に息子が生まれ、生後40日目にする 「揺りかごの儀」 を終えてベビーベッドに寝かせる前、妻の母がコーランの一節を唱えて祈祷し、魔除けにと義母愛用の折り畳み式ナイフを息子の枕元に置いてくれました。

 魔除けのナイフを枕元に置くのは、赤ん坊を魔物から守り穏やかな安眠を祈願するためのものです。

 息子は小学2年生ですが、魔除けナイフ祈願のご利益があったお陰か、数年後は私共両親の背丈を越える勢いですくすくと育っております。




写真1: 右端のスイカ切り売り屋のおじさんも腰にナイフを提げている。日曜バザール
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写真2: 妻宅にあるインギサ製ウイグルナイフ2本。下は調理用ナイフ
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写真3: インギサ製折り畳み式ウイグルナイフ各種。職人街のナイフ小売店
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江上鶴也
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by oghuzkahan | 2007-06-17 04:11

(26)


…… 台  所 ……

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 日本では台所・キッチンと言われる食事を作る所がありますが、平屋・2階屋のカシュガル・ウイグル家庭には、特に決められた調理場所はありません。
 多くは中庭の一部にLPガスボンベとコンロを設置し、縁台で食事の準備をしているようです。
 しかし、アパート・マンションは調理をする場所があり、ほとんどは都市ガスが供給されています。

 平屋にも都市ガス供給の計画は以前からあるのですが、各戸は都市ガス設置に醵金しなければなりませんので、生活苦のため負担金を支払えない家庭が多い現状から見ますと、妻宅に都市ガスが供給されるまではかなりの時間が掛かりそうです。


 カシュガル・ウイグルの大多数は低所得者層です。
 電気や上・下水工事、行政の指示でする各自宅前路上修理・拡張工事をするにも負担金が要りますので、日々の生活でさえ青息吐息の現状に追い討ちが加わります。

 住民の基本的生活を保障するのが行政の役目ですが、カシュガルでは最低限の生活でさえ住民の自己責任とするのが現実のようです。
 ですから、貧乏人が地方行政に窮乏を訴えても埒が明かないのは当たり前と言えます。

 そんな行政の隙間を埋めるものとして、ムスリム(イスラーム教徒)の地域共同体相互扶助があります。
 どんなに貧しくとも助け合いの精神で苦難に打ち勝つことを信じて現世を生き抜いているムスリムの拠り所です。

 ムスリムはアッラーの庇護の下、善行を積むことによって来世の幸福を信じますので、何処かで誰かの困り事があれば自己に見合った方法で手助けしなければなりません。

 ムスリムの生き方は、まるで、宮沢賢治の 「雨ニモマケズ」 にあるごとくです。


 2階屋の妻宅には珍しく台所があります。
 妻が2002年に日本から一時帰国した折、台所と水洗トイレ兼シャワー室を設けました。

 砂塵嵐が落ち着いて来た5月中旬、白壁も塗り直して気分一新したところで、妻が、「気候も良くなったので、今日から秋まで中庭で調理をしますから」 と宣言しました。

 中庭調理は雨降り時に難儀をしますが、妻宅はトタン製庇で覆われていますので雨が降っても心配無用で、5月20日の大雨でも雨粒が降込むことはありませんでした。 (24)、(25)参照

 妻は以前から欲しかった耐熱ガラスのガステーブルを購入することも決めてしまっていました。
 ガステーブル価格は、いつもの値引き交渉の末に310元(約5000円)で成立しました。
 魚焼きグリルが無いためか日本の重厚なものではなくすっきりした薄型です。

 5月の予算外出費としましては、デスクトップパソコン(3150元=約5万円)に次ぎます。

 LPガス入りボンベは50~80元(約800~1300円)で、妻宅では毎日3度の食事調理で1ヶ月持ちません。
 冬場はLPガスの消費が少ないため安く、夏場は消費が多いため割高になります。
 5月は53元で購入しましたが、6月は63元でした。
 どこの家庭でも1つ予備があります。

 貧しい家庭では廉価な石炭燃料を使い、中庭に設置した石炭ストーブで調理します。
 農家では薪が主流です。

 日本ではLPガスの家屋内設置が禁止されていると、30年以上前に沖縄・西表島で暮らしていた時に販売員から聞きましたが、新疆ウイグル自治区(中国他地域は不明)では建造物構造上からか禁止されておらずガステーブルの傍に置いています。

 98年夏から3年ほど暮らしたウルムチ(新疆ウイグル自治区首都)のマンションでもLPガスで室内設置でした。

 カシュガルの平屋ではほとんどが中庭にLPガスを置いているため、ガス爆発の危険性はきわめて少ないと思われます。

 LPガスは移動が自由なため、調理場所を選びませんが、カシュガルでは将来、平屋・2階屋にも都市ガスが供給されますので、妻宅のような決められた調理場所(台所)が出現し、ウイグルの生活に変化をもたらすかも知れません。




写真1: 夏場の調理場所を中庭に設置。縁台代わりのベッドで食事準備する
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写真2: カシュガル郊外の妻親戚農家のカマド。冬は左側の石炭ストーブで調理する
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写真3: 農家の湯沸し専用カマド。土台は洗面器が使われている
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江上鶴也
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by oghuzkahan | 2007-06-14 10:23