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…… 慈  雨 ……

اَلسَّلامُ عَلَيْكُمْ

アッサラームアレイコム
 (あなたに平安を)



 
 数日来、昼間の晴天が嘘のように、夜半に砂塵嵐が起こり、風に煽られた妻宅の2階部分を覆うトタン製庇が軋んで音を立てています。

 特に4月中旬からの砂塵禍で、私の喉は悲鳴を上げており、一時は声が出なくなっていました。
 砂塵吸引のためか咳が止まりませんので、気温が一定になり、春の砂塵嵐が去るのを首を長くして待っている状態です。

 息子も私と同じように咳き込むことがありますので、砂塵との付き合いが無かったため呼吸器系器官が順応しておらず拒絶反応を起こすのではないかと思います。

 液体や固体の喉薬を服用しても効果薄く、勧められて常時、白湯を飲んでもいるのですが、中年の弱った身体が回復するには時間が掛かりそうです。

 喉に優しい日本の湿った空気を吸えば、たちどころに受難から解放されそうですが、夏の帰国までは2ヶ月間ありますので、何とか砂塵に打ち克ちたいものです。


 5月20日午後4時過ぎ、雷鳴とともに雨が激しく降り出しました。
 突然、妻宅のトタン製庇へ満杯のバケツをひっくり返したかのような轟音がしましたので、1階の自室にいても待ちに待った降雨であることが分かりました。
 2ヶ月振りの雨でした。

 砂嵐の時期には、一雨降れば良いのにと、誰もが雨を乞います。
 雨は空中の砂塵を落とし、建物に降り付いた砂塵を洗い流しますので、煤けたような町をさっぱりとさせてくれます。
 ですから、建物から流れ落ちる雨水も路上を流れる雨水も泥水です。

 降雨は半時間ほど続きました。
 日本では夕立と言うのでしょうか、朝から曇り空でしたし、大雨でしたから、にわか雨ではないようでした。

 因みに、にわか雨を日本語は「狐の嫁入り」と言いますが、ウイグル語では「狼の出産」と言います。

 ウイグルの出産についても狼と狐の例えがあります。
 出生した赤ん坊の性別を尋ねる時、「狼ですか狐ですか」と表現することもあるそうです。
 男の子ならば狼で、女の子ならば狐と答えるそうです。
 
 狐は農耕の神、狼は狩猟の神とも言われています。
 日本の狐とウイグルの狼、どちらもシンボル的な動物ですので、狐と狼で表現されるそれぞれの民族・民俗文化を比較するのも面白いと思います。


 カシュガル住民はこのような激しい雨はめったに降らず、しかも直ぐに止むことを知っていますので、妻宅近くの職人街では、店外の商品を取り込み仕事の手を休めて雨空を眺めているか、客足が遠のいたので早めに店を閉めてしまうかします。

 雨が止むと、自宅前路上に女性がたむろし、路上に溜まった雨水を処分し始めます。
 妻宅前路上にもご近所の女性が集まり、妻と若い女性5、6人が開けた下水マンホールへ盛んに雨水を流し込み始めました。
 妻宅のご近所に普段は見掛けない若い女性がけっこういることも分かりました。

 女性がする最初の家事が中庭・廊下・階段や自宅前路上の掃き掃除ですので、雨水処理も同じ箒で実に手際が良く10分ほどで終わってしまいました。

 各戸に水道がなかった時代の水運び仕事もそうでしたが、雨水処理も女性と子供の仕事です。
 ただし、水溜りの窪みを直し路面を平坦にするため、敷かれた六角形コンクリート板を剥がして道修理する場合は男性の力が要ります。 (5)参照

 翌日の朝方は、湿気を含んだ空気がひんやりとしており、束の間の涼気が感じられました。
 しかし、昼近くになりますと強い日差しに晒されて、昨日の激しい雨など無かったかのようにいつもの乾いた路面になっていました。

 この慈雨を契機に、喉の痛みから解放され咳が止まることを願っていたのですが、午後から強風が吹き始めましたので、また砂塵攻撃の矢面に立たされてしまいました。




写真1: 突然の大雨に驚く息子。妻宅前路上
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写真2: 職人街も人通りが途絶えた。傘を持っている人は少ない
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写真3: 路上の雨水を処分するため下水マンホールに流し込む
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文・写真の無断転載厳禁
copyright © 2007 ウイグルの生活と文化 all rights reserved.

江上鶴也
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by oghuzkahan | 2007-05-23 13:59

(24)


…… 砂 塵 禍 ……

اَلسَّلامُ عَلَيْكُمْ

アッサラームアレイコム
 (あなたに平安を)



 
 4月中旬になって、一気に最高気温が30℃を超えました。
 しかし、朝夕は涼しく、温度差が20℃ほどあったりましすので、体調を崩します。
 その上に、砂嵐のため小麦粉のような微細な砂塵が降り注ぎますので、微粒子が体内に入り込んだ影響からか、頭痛がして気分が悪くなります。

 日本では、春先の花粉や黄砂で被害を受けますが、年中砂塵が舞うカシュガルでは、特に春の気温上昇に伴い強風が吹き荒れてタクラマカン砂漠の砂が上空に舞い上がったものが降り注ぎます。

 地元では 「土が降る」と言います。

 町中は砂塵で覆われてしまい、人体のみならず生活上にも影響があります。
 商店は客足が減りますし、視野が悪いため飛行機が運休し交通事故も発生します。

 砂塵時は外出時に大き目のマスクをしませんと喉が腫れて痛くなります。
 家の中に居ても砂塵が舞い込みますので咳が出ます。

 5月中旬も砂嵐があるとの予報ですから、カシュガル方面旅行は6月以降をお薦めします。


 妻宅では昨年夏前、砂塵・直射日光・雨避けにと、2階部分一面を覆うトタン製庇を取り付けました。
 費用は約3700元(=約6万円)掛かりました。
 庇設置は昨年8月中旬に亡くなった妻母親の強い希望でした。
 
 しかし、日中は気温30℃以上の上に強い直射日光がトタン庇を焼きますので、冬中暮らした石炭ストーブのある2階は、午前中は過ごし易いものの、夜になっても熱気がこもって暑いため、2階から1階へ撤退しなければなりません。
 暖房設備が無いため冬中使用しない1階は、夏は冷房不要ですので快適安眠できます。


 冬の石炭ストーブ煤煙や春の砂塵を吸引しているカシュガル住民を健康診断してみれば、きっと呼吸器系器官異常が見つかることでしょう。

 健康保険医療が整っていない中国では、入院・手術治療を受けるには手付け金が要り、また多大な治療費が掛かりますので、収入の少ない家庭では大問題です。

 カシュガルでは病院経営が稼げることを知った医者達が独立開業して競合しており、治療費が安い旨をうたい文句とした各種総合・専門病院のテレビコマーシャルが盛況です。


 以前、ご紹介しましたが、夜明け前礼拝後に女性が最初にする家事は、中庭や門前路上の掃除です。
 水を撒き、前日に降った砂塵を箒で掃き除きます。

 春の砂嵐時は、中庭、廊下、階段に積もった砂塵をモップで拭き取り掃除しますが、翌日も同じことをしなければなりませんので、この時期は砂との戦いです。

 まるで、安部公房氏の小説「砂の女」にある、毎日砂を掃き出さなければ埋もれてしまう家のごとくです。

 たまにモップ掃除を手伝いますが、モップに付いた砂塵を洗い落とすだけでも重労働です。

 長期間留守にしますと、帰宅してからの掃除が大変です。

 しかし、壁に張り付いた砂塵は掃除せずに、年に数回白壁を塗り直します。
 また、冬中、石炭ストーブの煤で汚れた部屋の壁も塗り直します。

 砂塵のためか、まだ年数が経っていない高層ビルは、まるで老朽化したビルのような外観です。

 もしも、何らかの理由で、カシュガルが無人になったとしたならば、数年数十年後には砂に飲み込まれてしまい、つい最近まで人の営みがあったことさえも感じさせない遺跡と化していることでしょう。




写真1: 妻宅の2階部分一面を覆うトタン製庇。夏は熱がこもって暑い
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写真2: 砂塵が降った中庭をモップ掃除する
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写真3: 白壁塗り。すぐに乾いてしまうので簡単
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江上鶴也
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by oghuzkahan | 2007-05-08 21:41