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…… チャイハナ(喫茶店) ……

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 (あなたに平安を)



 チャイハナ(喫茶店)は、カシュガルでは無くなる寸前の商売です。

 85年の春、初めてのカシュガルは、見る物全てが物珍しく、バカチョンカメラを片手にうろついてはシャッターを切りまくっていました。

 歩き疲れると、カスカン通り(職人街)にあったチャイハナで一休みするのが日課でした。
 毎日、午前と午後の2度、そのチャイハナに顔を出していましたので、いつしか顔馴染みになり、常連さんたちと言葉を交わすようになりました。

 そんなことで、チャイハナが私の実践ウイグル語会話教室となりました。
 ですから、私は本当の 「お茶の間留学」 でウイグル語を勉強したのです。

 毎日何度となく、「どこから来た」、「何歳」、「仕事は何」、「腕時計はいくら」などと質問攻めでした。
 ウイグル語が話せなかった頃は、「ヤポーニヤ(日本)」、「オットゥズ(30)」などと返事していましたが、相手にも同じ質問をするようになってくると、会話のコツが分かってきたように感じられました。

 チャイハナは地域の社交場です。
 現在のチャイハナは、お年寄りたち(男性)の憩の場です。

 私がいつも通ったカスカン通りのチャイハナは、職人たちが休憩に利用したり、郊外から買い物に来た人たちが休憩したりする所でした。

 真偽のほどは定かではありませんが、チャイハナと理髪店には警察の間諜が出入りしており、世間話に反政府的なものがないか聞き耳を立てているようだとの噂もあります。

 もしかしたら、警察の援助で営業しているチャイハナがあるかも知れません。

 21世紀のカシュガルは、チャイハナ商売で暮らしていけるような時代では無くなりました。
 チャイハナから食堂に鞍替えするか他業種に商売替えするかして廃れてしまいました。

 私が通っていたチャイハナは、2年ほど前に廃業して以来、店舗を貸しています。
 元チャイハナ主人曰く、賃貸の方が楽でのんびりできて楽しい、とのことです。

 「この界隈ではここ一軒のみになってしまった」 と、エティガモスク近くにあるチャイハナ主人が言っていました。
 このチャイハナでのんびりと世間話する間も、誰かのポケットから携帯呼び出し音が聞こえてくる時代です。
 
 チャイハナのお茶は(7)でご紹介しました、廉価なカラチャイ(茯茶)ですから、嗜好が紅茶に替わりつつあるカシュガルではチャイハナを必要としなくなったのでしょうか。

 今後、ウイグルの生活変容に拍車が掛かれば、トルコに憧れていることもありますので、洒落たガラスコップ(チャイグラス)に淹れたトルコ風チャイを飲む、憩い・社交場としての垢抜けたチャイハナが出現するのではないかと当て推量しています。

 経済成長著しい中国の片隅にあるカシュガルは、一見すごくのんびりとしているかのようなのですが、私が知る80年代の雰囲気は感じられなくなっています。

 文化大革命(66年~76年)から復興しつつあった80年代のカシュガルを知っておられる方は幸運と言えるかも知れません。

 それとも、トルコ風チャイを飲ませる未来のチャイハナに期待を寄せられてはどうでしょうか。



写真1: チャイハナの看板。カシュガルのチャイハナは数少なくなった
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写真2: リストラに遭ってからチャイハナを開業したという経営者
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写真3: チャイハナで休憩する客。民家をチャイハナにしている
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江上鶴也
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by oghuzkahan | 2007-03-31 23:33

(19)


…… 割れ物継ぎ ……

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 (あなたに平安を)


 日本の伝統工芸の一つに、 「金継ぎ」 と言われる、割れた陶磁器の修理方法(割れた箇所を漆で接着後、割れに沿って金で装飾)があります。

 「金継ぎ」 の代表的なものに、桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した本阿弥光悦の茶碗 「雪峯」 (畠山記念館収蔵)があります。


 カシュガルには、日本の 「金継ぎ」 のような工芸ではありませんが、つい最近まで家庭で使われる陶磁器製食器類を修理する仕事(割れた箇所を膠で接着後、コの字型釘で固定)がありました。

 ウイグルの生活が向上した証でしょうか、最近は割れた食器類をわざわざ修理してまで使うことはなく、また、以前修理した食器類を使うことも残して置くこともないようです。

 そんな理由で仕事が無くなってしまい、修理屋の小父さんの姿が見えなくなってしまいました。

 私が知っている修理屋は、カシュガルの中心地にあるエティガモスク前で仕事していた小父さんと、路地裏を回り各戸の前で仕事していた小父さんの2人です。

 昨年夏、妻が修理屋の小父さんをどこかで見かけたらしいのです。
 暖かくなって、もし修理屋の小父さんをどこかで見かけることがあれば、仕事ぶりをビデオ撮影させてもらいます。
 廃業していれば探し出してビデオ撮影に協力してもらうつもりでいます。
 いずれにせよ、修理屋の小父さんが健在でおられることを願っています。

 かつて、ウイグルの生活に密接に関わり合いのあった陶磁器製食器類修理業は、誰もが貧しかった頃の職業ですから、ウイグルの生活が豊かになりつつある今、廃れるのも時代の趨勢であるようです。

 バザールで廉価な気の利いた新品がいくらでも買えますので、貧乏くさくて格好悪い修理した食器類は、ゴミに棄てられる運命です。

 残念ながら、カシュガルでは継ぎ物の食器類に価値を見出せないようですが、その内、アンティークショップで高値取引されるのかも知れません。

 ウイグルの生活歴史文化品として博物館や資料館で展示・保存されることを望みます。

 ウイグルの生活文化が大きく変わる節目と思われる現在、古いからと言って簡単に反故にすることなく、貴重な文化遺産として保存や記録することをみんなで考えて欲しいのですが、理解してもらうには随分時間が掛かりそうです。




写真1: 仕事中の陶磁器食器修理屋 (85年)
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写真2: 割れた食器を修理してもらいに来た子ども達 (85年)
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写真3: 修理された大皿
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江上鶴也
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by oghuzkahan | 2007-03-25 01:24

(18)


…… ト マ ト ……

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 (あなたに平安を)


 夏の野菜類は、どれも1㎏が1元(=約16円)です。

 カシュガルでは、よく親が子供に、 「ラグメン(皿うどん)」 用に野菜1元分買って来るようにとお使いに行かせたりします。
 八百屋に 「ラグメン」 用の野菜1元分くださいと伝えれば、野菜数種類1㎏分を薄っぺらのレジ袋に入れてくれます。

 ウイグルは生野菜をほとんど食べません。
 「ポロ(煮込みご飯)」 の付け合わせに少量添えるくらいです。

 トマトも生食せず、もっぱら炒め物に使います。
 カシュガルでは、冬の野菜不足に備え、夏のトマト最盛期に干しトマトを作ります。
 野菜の少ない冬、干しトマトをお湯でもどし、刻んで炒め物に加えます。

 夏場、妻宅がある路地でもトマト売りがロバ車に満載させて売り歩きます。
 トマト売りから買うと、10㎏入りカゴが8元と割安です。

 妻宅では、2階の廊下に紙を敷き、半分に切ったトマトの切り口を上にして置いたものに、塩を振りかけて乾燥させます。
 カシュガルは大乾燥地ですから、4、5日もすれば水気が抜けてしまい干しトマトになります。
 10㎏のトマトが1㎏ほどになるとのことです。

 しかし、雨に濡れると腐ってしまいますので、雨が降れば取り入れます。
 また、細かい砂が舞い降りるカシュガルでは、砂にも気を遣わなければなりません。
 特に風の強い日には、干しているトマトを紙などで覆って砂害を避ける必要があります。

 昨年夏、妻が用事で2日間、家を留守した日、小雨が降ったものの、どうせ直ぐに乾いてしまうからと、乾燥中のトマトを取り入れることも覆うこともせずそのままにしていました。
 案の定、ほとんどが腐れてしまい棄てざるを得なくなりましたので、妻から大目玉を食らいました。

 冬の野菜と言えば、白菜、ジャガイモ、黄ニンジン、タマネギ、ニンニク、ホウレン草など限られていましたので、 「ラグメン(皿うどん)」 の具は、上記、黄ニンジン以外の野菜、干しトマト、羊肉くらいでした。

 それが、5年ほど前からハウス栽培野菜が出回り始めましたので、冬でも夏と同じ野菜が食べられるようになりました。

 3月中旬の今は、野菜色々セット1㎏=6元ですから夏の6倍です。
 トマトも1㎏=6元ですから、お金に余裕があれば生トマトが食べられます。
 ただし、白菜は1㎏=1元(先月まで3㎏=1元)、昨年豊作だった黄ニンジンは2㎏=1元です。
 
 行政もハウス栽培を奨励していますので、販売価格次第ですが、今後、冬でも常時、生鮮野菜が食べられるようになります。

 いずれ、妻宅では干しトマト作りをしなくなるかも知れませんので、また一つ夏の風物詩が風前の灯火となるのでしょうか。




写真1: ロバ車に積んで売り歩くトマト売り
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写真2: 干しトマト作り。妻宅2階
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写真3: 5年ほど前から、冬でも地元の野菜(ハウス栽培)を売るようになった
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by oghuzkahan | 2007-03-19 01:12

(17)


…… 氷 ……

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 (あなたに平安を)


 夏の甲子園高校野球大会の名物は、試合観戦でボルテージが上がった身体に束の間の冷気を与える、ビニール袋に割った氷を入れストローを挿して袋口を輪ゴムで止めた、「かち割り」 です。
 シロップ入りの甘い 「かち割り」 もあるとのことです。


 カシュガルでも 「かち割り氷」 を使った、「ドーグゥ」 又は 「ドグァップ」 と言われる夏の風物詩のような飲料があります。

 夏季はあちらこちらでドーグゥ屋が営業しており盛況です。

 「ドーグゥ」 は、ドンブリに「かち割り氷」を入れてすすいだ後、ヨーグルト数匙と水を加えた酸味のものと、これに蜂蜜を加えて甘くしたものがあります。

 炎天下に酸味の冷たい 「ドーグゥ」 を味わうのは格別です。

 しかし、今や 「ドーグゥ」 に代わる冷えたペットボトル飲料が席巻していますし、昔ながらの製法で作るアイスクリームの方が好まれています。

 時代とともに嗜好に変化がありますので、「ドーグゥ」屋は、早晩、カシュガルから姿を消す運命と思われます。

 冷蔵庫で製氷すれば簡単に家庭で 「ドーグゥ」 を味わうことができますので、お茶代わりに 「ドーグゥ」 でおもてなしするようになったり、ペットボトルの 「ドーグゥ」 が売り出されるようになったりするかも知れません。

 「ドーグゥ」 に使われる氷は、冬に凍結した池の水です。
 真冬、池の分厚く張った氷を切り出し、その氷塊をロバ車で搬送して氷室に保管し、夏になると 「ドーグゥ」 用に使われています。
 
 5月初旬、カシュガル郊外のアトシュから搬送して来たという氷運搬人に話を聞きました。
 アトシュの氷室では2月から9月まで蓄氷されるとのことです。
 現在でも池の氷は、「ドーグゥ」やアイスクリーム作りに需要があるとのことでした。

 「ドーグゥ」好きに言わせると、「ドーグゥ」は池の氷に限ると味の違いを主張します。

 2月から9月の氷保存期間が終わると氷室(野菜・果物保存用室兼用)には秋に収穫したメロン、スイカや根菜類を保管し、冬・春に販売します。   

 冬のスイカと言えば、妻が息子を身ごもっていた頃、スイカが食べたいと言い出しましたので、仕方なく零下のウルムチでスイカを探し求めて持ち帰ったり、寒空の中、バザールで妻が歯をガチガチ言わせながらスイカを食べたりしていたのを想い出します。

 当然ながら、池の氷は不純物が混入しており、その富栄養氷を 「ドーグゥ」 にすると、氷に土が閉じこめられているのが見えました。
 そのヨーグルト味の 「ドーグゥ」 で渇きを癒しながらも、氷が溶けてドンブリの底に溜まっている土を見ると、肝炎が感染しても当然だと思いました。

 今では、衛生面から池の氷ではなく冷凍庫で製氷したものを使用するようにとの通達があるそうです。
 将来的には懐かしい土混じりの氷は 「ドーグゥ」 に入らなくなるかも知れません。

 冷蔵庫も一般化しましたが、お茶や水を冷やしたり、冷凍庫で氷を作ったりすることはありません。
 妻宅では冷凍庫は羊肉専用なのですが、羊肉はその都度、バザールで新鮮なものを買いますので、冷凍庫には何も入っていません。

 また、メロンやスイカも冷やして食べたりしませんが、余ったものは冷蔵庫に保存します。

 ウイグルは、身体が冷えることを嫌いますので、極力、冷えたものを飲食しないのですが、なぜ 「ドーグゥ」 を飲むようになったのか不思議です。




写真1: ドーグゥ屋 日曜バザール(6/3)
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写真2: カシュガル市内の凍結した池から切り出した氷 (86年)
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写真3: カシュガル郊外アトシュから運んできた氷 (5/3)
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by oghuzkahan | 2007-03-13 13:35

(16)


…… 暖  房 ……

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 今冬はカシュガルも暖冬でした。
 やがて春の訪れを告げる春一番ならぬ「砂嵐」が吹き荒れて、どこもかしこも砂だらけにしてしまい、外出すれば砂まみれになります。
 
 二階屋の妻宅は、暖房には石炭ストーブを使用しますので、冬中、寒さと石炭ストーブに翻弄されます。

 平屋・二階屋はどこでも安上がりな石炭ストーブを使いますが、割高な電気ストーブは、高層集合住宅のセントラルヒーティング稼働前後に応急的に使われたりもします。

 石炭ストーブは石炭の置き場所確保や、紙と薪で火を熾して石炭をくべたり、燃え滓を処分したりと煩瑣なのですが、安いが一番、石炭燃焼による二酸化硫黄、窒素酸化物、煤塵などの有害汚染物質発生、地球温暖化の原因となる二酸化炭素排出、それらによる環境・健康被害などの問題も何処吹く風のように見えます。

 日本でも安上がりな石油暖房は、石油のストックや注ぎ足したり匂いがしたりとかのデメリットもありますが、多少は我慢するしかありません。

 上質の石炭は100㎏=84元(1元=約16円)です。
 暖冬だった今冬、妻宅では春までに1500㎏を使い切るようです。

 実は、妻が石炭ストーブを使うのは8年振りです。
 98年、結婚後の住まいは、新疆ウイグル自治区首都ウルムチのマンションでしたので、冬はセントラルヒーティングの快適暖房でした。
 02年、日本に移ってからも各種電気暖房でしたので、スイッチをオンオフするだけで何も煩わしさはありませんでした。
 
 64年(東京オリンピック年)前後数年、私が神戸市内の小学生だった頃、冬場、各教室に設置してあった暖房用の石炭ストーブは、息子が前学期在籍したカシュガルの小学校に設置してあるのと同じ様なものでした。 (息子は今学期よりセントラルヒーティング完備の小学校在籍)

 私が育った60年代の日本と息子が育っている現在のカシュガルがだぶって見えます。
 
 カシュガルの冬期は11月中旬から3月中旬の4ヶ月間(ウルムチは10月中旬から4月中旬の半年間)で、つまり、セントラルヒーティングが稼働する期間です。

 セントラルヒーティング代は各戸の広さによって決まります。
 居住面積1㎡当たり20元で、昨年85㎡のマンションを購入した友人は、一冬(4ヶ月)1700元支払ったとのことです。

 高層集合住宅やビルでは、セントラルヒーティングの温水暖房ですから、室内だけでなく階段踊り場も冬中暖かく快適に過ごせます。
 屋内では夏場と変わらない生活ができますし、第一、煩わしい石炭ストーブを扱う苦労をせずに済みます。

 しかし、セントラルヒーティング完備の近代的な高層集合住宅では決して味わうことができないのが、(3)でご紹介しました古のカシュガルを肌で感じることができる中庭のある暮らしです。

 セントラルヒーティングと言っても、ボイラー燃料は石炭ですので、冬中、石炭燃焼による環境汚染物質や地球温暖化ガスが蔓延することになります。

 因みに、ウルムチ市は、中国で大気汚染が最もひどい都市の一つに挙げられます。
 石炭燃焼で有害汚染物質が舞い上がっている空は、冬中、曇天で黒褐色の雪が積もっています。

 ウルムチに居るだけで健康被害を受けますので、健康被害実態調査や予防・救済対策が急がれます。



写真1: 石炭売り。搬送してくれる
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写真2: 8年振りの石炭ストーブに閉口する妻
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写真3: 息子が前学期在籍した小学校の教室。石炭ストーブがあっても寒い
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by oghuzkahan | 2007-03-08 21:56