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(18)


…… ト マ ト ……

اَلسَّلامُ عَلَيْكُمْ

アッサラームアレイコム
 (あなたに平安を)


 夏の野菜類は、どれも1㎏が1元(=約16円)です。

 カシュガルでは、よく親が子供に、 「ラグメン(皿うどん)」 用に野菜1元分買って来るようにとお使いに行かせたりします。
 八百屋に 「ラグメン」 用の野菜1元分くださいと伝えれば、野菜数種類1㎏分を薄っぺらのレジ袋に入れてくれます。

 ウイグルは生野菜をほとんど食べません。
 「ポロ(煮込みご飯)」 の付け合わせに少量添えるくらいです。

 トマトも生食せず、もっぱら炒め物に使います。
 カシュガルでは、冬の野菜不足に備え、夏のトマト最盛期に干しトマトを作ります。
 野菜の少ない冬、干しトマトをお湯でもどし、刻んで炒め物に加えます。

 夏場、妻宅がある路地でもトマト売りがロバ車に満載させて売り歩きます。
 トマト売りから買うと、10㎏入りカゴが8元と割安です。

 妻宅では、2階の廊下に紙を敷き、半分に切ったトマトの切り口を上にして置いたものに、塩を振りかけて乾燥させます。
 カシュガルは大乾燥地ですから、4、5日もすれば水気が抜けてしまい干しトマトになります。
 10㎏のトマトが1㎏ほどになるとのことです。

 しかし、雨に濡れると腐ってしまいますので、雨が降れば取り入れます。
 また、細かい砂が舞い降りるカシュガルでは、砂にも気を遣わなければなりません。
 特に風の強い日には、干しているトマトを紙などで覆って砂害を避ける必要があります。

 昨年夏、妻が用事で2日間、家を留守した日、小雨が降ったものの、どうせ直ぐに乾いてしまうからと、乾燥中のトマトを取り入れることも覆うこともせずそのままにしていました。
 案の定、ほとんどが腐れてしまい棄てざるを得なくなりましたので、妻から大目玉を食らいました。

 冬の野菜と言えば、白菜、ジャガイモ、黄ニンジン、タマネギ、ニンニク、ホウレン草など限られていましたので、 「ラグメン(皿うどん)」 の具は、上記、黄ニンジン以外の野菜、干しトマト、羊肉くらいでした。

 それが、5年ほど前からハウス栽培野菜が出回り始めましたので、冬でも夏と同じ野菜が食べられるようになりました。

 3月中旬の今は、野菜色々セット1㎏=6元ですから夏の6倍です。
 トマトも1㎏=6元ですから、お金に余裕があれば生トマトが食べられます。
 ただし、白菜は1㎏=1元(先月まで3㎏=1元)、昨年豊作だった黄ニンジンは2㎏=1元です。
 
 行政もハウス栽培を奨励していますので、販売価格次第ですが、今後、冬でも常時、生鮮野菜が食べられるようになります。

 いずれ、妻宅では干しトマト作りをしなくなるかも知れませんので、また一つ夏の風物詩が風前の灯火となるのでしょうか。




写真1: ロバ車に積んで売り歩くトマト売り
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写真2: 干しトマト作り。妻宅2階
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写真3: 5年ほど前から、冬でも地元の野菜(ハウス栽培)を売るようになった
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江上鶴也
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by oghuzkahan | 2007-03-19 01:12

(17)


…… 氷 ……

اَلسَّلامُ عَلَيْكُمْ

アッサラームアレイコム
 (あなたに平安を)


 夏の甲子園高校野球大会の名物は、試合観戦でボルテージが上がった身体に束の間の冷気を与える、ビニール袋に割った氷を入れストローを挿して袋口を輪ゴムで止めた、「かち割り」 です。
 シロップ入りの甘い 「かち割り」 もあるとのことです。


 カシュガルでも 「かち割り氷」 を使った、「ドーグゥ」 又は 「ドグァップ」 と言われる夏の風物詩のような飲料があります。

 夏季はあちらこちらでドーグゥ屋が営業しており盛況です。

 「ドーグゥ」 は、ドンブリに「かち割り氷」を入れてすすいだ後、ヨーグルト数匙と水を加えた酸味のものと、これに蜂蜜を加えて甘くしたものがあります。

 炎天下に酸味の冷たい 「ドーグゥ」 を味わうのは格別です。

 しかし、今や 「ドーグゥ」 に代わる冷えたペットボトル飲料が席巻していますし、昔ながらの製法で作るアイスクリームの方が好まれています。

 時代とともに嗜好に変化がありますので、「ドーグゥ」屋は、早晩、カシュガルから姿を消す運命と思われます。

 冷蔵庫で製氷すれば簡単に家庭で 「ドーグゥ」 を味わうことができますので、お茶代わりに 「ドーグゥ」 でおもてなしするようになったり、ペットボトルの 「ドーグゥ」 が売り出されるようになったりするかも知れません。

 「ドーグゥ」 に使われる氷は、冬に凍結した池の水です。
 真冬、池の分厚く張った氷を切り出し、その氷塊をロバ車で搬送して氷室に保管し、夏になると 「ドーグゥ」 用に使われています。
 
 5月初旬、カシュガル郊外のアトシュから搬送して来たという氷運搬人に話を聞きました。
 アトシュの氷室では2月から9月まで蓄氷されるとのことです。
 現在でも池の氷は、「ドーグゥ」やアイスクリーム作りに需要があるとのことでした。

 「ドーグゥ」好きに言わせると、「ドーグゥ」は池の氷に限ると味の違いを主張します。

 2月から9月の氷保存期間が終わると氷室(野菜・果物保存用室兼用)には秋に収穫したメロン、スイカや根菜類を保管し、冬・春に販売します。   

 冬のスイカと言えば、妻が息子を身ごもっていた頃、スイカが食べたいと言い出しましたので、仕方なく零下のウルムチでスイカを探し求めて持ち帰ったり、寒空の中、バザールで妻が歯をガチガチ言わせながらスイカを食べたりしていたのを想い出します。

 当然ながら、池の氷は不純物が混入しており、その富栄養氷を 「ドーグゥ」 にすると、氷に土が閉じこめられているのが見えました。
 そのヨーグルト味の 「ドーグゥ」 で渇きを癒しながらも、氷が溶けてドンブリの底に溜まっている土を見ると、肝炎が感染しても当然だと思いました。

 今では、衛生面から池の氷ではなく冷凍庫で製氷したものを使用するようにとの通達があるそうです。
 将来的には懐かしい土混じりの氷は 「ドーグゥ」 に入らなくなるかも知れません。

 冷蔵庫も一般化しましたが、お茶や水を冷やしたり、冷凍庫で氷を作ったりすることはありません。
 妻宅では冷凍庫は羊肉専用なのですが、羊肉はその都度、バザールで新鮮なものを買いますので、冷凍庫には何も入っていません。

 また、メロンやスイカも冷やして食べたりしませんが、余ったものは冷蔵庫に保存します。

 ウイグルは、身体が冷えることを嫌いますので、極力、冷えたものを飲食しないのですが、なぜ 「ドーグゥ」 を飲むようになったのか不思議です。




写真1: ドーグゥ屋 日曜バザール(6/3)
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写真2: カシュガル市内の凍結した池から切り出した氷 (86年)
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写真3: カシュガル郊外アトシュから運んできた氷 (5/3)
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江上鶴也
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by oghuzkahan | 2007-03-13 13:35

(16)


…… 暖  房 ……

اَلسَّلامُ عَلَيْكُمْ

アッサラームアレイコム
 (あなたに平安を)


 今冬はカシュガルも暖冬でした。
 やがて春の訪れを告げる春一番ならぬ「砂嵐」が吹き荒れて、どこもかしこも砂だらけにしてしまい、外出すれば砂まみれになります。
 
 二階屋の妻宅は、暖房には石炭ストーブを使用しますので、冬中、寒さと石炭ストーブに翻弄されます。

 平屋・二階屋はどこでも安上がりな石炭ストーブを使いますが、割高な電気ストーブは、高層集合住宅のセントラルヒーティング稼働前後に応急的に使われたりもします。

 石炭ストーブは石炭の置き場所確保や、紙と薪で火を熾して石炭をくべたり、燃え滓を処分したりと煩瑣なのですが、安いが一番、石炭燃焼による二酸化硫黄、窒素酸化物、煤塵などの有害汚染物質発生、地球温暖化の原因となる二酸化炭素排出、それらによる環境・健康被害などの問題も何処吹く風のように見えます。

 日本でも安上がりな石油暖房は、石油のストックや注ぎ足したり匂いがしたりとかのデメリットもありますが、多少は我慢するしかありません。

 上質の石炭は100㎏=84元(1元=約16円)です。
 暖冬だった今冬、妻宅では春までに1500㎏を使い切るようです。

 実は、妻が石炭ストーブを使うのは8年振りです。
 98年、結婚後の住まいは、新疆ウイグル自治区首都ウルムチのマンションでしたので、冬はセントラルヒーティングの快適暖房でした。
 02年、日本に移ってからも各種電気暖房でしたので、スイッチをオンオフするだけで何も煩わしさはありませんでした。
 
 64年(東京オリンピック年)前後数年、私が神戸市内の小学生だった頃、冬場、各教室に設置してあった暖房用の石炭ストーブは、息子が前学期在籍したカシュガルの小学校に設置してあるのと同じ様なものでした。 (息子は今学期よりセントラルヒーティング完備の小学校在籍)

 私が育った60年代の日本と息子が育っている現在のカシュガルがだぶって見えます。
 
 カシュガルの冬期は11月中旬から3月中旬の4ヶ月間(ウルムチは10月中旬から4月中旬の半年間)で、つまり、セントラルヒーティングが稼働する期間です。

 セントラルヒーティング代は各戸の広さによって決まります。
 居住面積1㎡当たり20元で、昨年85㎡のマンションを購入した友人は、一冬(4ヶ月)1700元支払ったとのことです。

 高層集合住宅やビルでは、セントラルヒーティングの温水暖房ですから、室内だけでなく階段踊り場も冬中暖かく快適に過ごせます。
 屋内では夏場と変わらない生活ができますし、第一、煩わしい石炭ストーブを扱う苦労をせずに済みます。

 しかし、セントラルヒーティング完備の近代的な高層集合住宅では決して味わうことができないのが、(3)でご紹介しました古のカシュガルを肌で感じることができる中庭のある暮らしです。

 セントラルヒーティングと言っても、ボイラー燃料は石炭ですので、冬中、石炭燃焼による環境汚染物質や地球温暖化ガスが蔓延することになります。

 因みに、ウルムチ市は、中国で大気汚染が最もひどい都市の一つに挙げられます。
 石炭燃焼で有害汚染物質が舞い上がっている空は、冬中、曇天で黒褐色の雪が積もっています。

 ウルムチに居るだけで健康被害を受けますので、健康被害実態調査や予防・救済対策が急がれます。



写真1: 石炭売り。搬送してくれる
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写真2: 8年振りの石炭ストーブに閉口する妻
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写真3: 息子が前学期在籍した小学校の教室。石炭ストーブがあっても寒い
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江上鶴也
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by oghuzkahan | 2007-03-08 21:56

(15)


…… お 土 産 ……

اَلسَّلامُ عَلَيْكُمْ

アッサラームアレイコム
 (あなたに平安を)


 ウイグルのお宅へ食事招待された時、手土産を持って行くのが普通です。


 食事招待と言っても、特別な料理が出ることはなく、「ラグメン(皿うどん)」、「ポロ(煮込みご飯)」 など普段食べているウイグル家庭料理です。

 レストランへ招待された場合は、普段食べない魚料理や凝った料理などもご馳走になります。
 ただし、魚料理は中華料理と同じ様な味付けですし、ウイグルは同じトルコ系民族だからと言っても、世界三大料理の一つとして有名なトルコ料理のように垢抜けてもいません。

 カシュガルには、トルコ料理に唯一勝ると思われる美味しい羊肉食材があるのですが、名物のカワップ(串焼き羊肉)だけではもったいなく、もう少し羊肉料理のレパートリーがあればと思います。
 

 さて、お土産はごく普通のもので、バザールの屋台で売っている果物を何種類か持って行きます。
 また、小綺麗な商店 (※写真1) が増えていますので、市販の食品類もお土産にされます。
 贈答用に包装されたビスケット (※写真2) の詰め合わせ、ケーキ類なども数年前から一般化しています。


 20年ほど前、ウルムチの延安路で、ビスケット(ロシア人、タタール人から伝受)を製造販売するウイグル経営の店があり、新疆大学留学時代よく買いに行きました。

 カシュガルでは、ビスケット製造販売店が散見するようになって10年ほどです。
 量り売りですと、1㎏が15元(=約250円)です。
 

 しばらく振りに会う親類縁者や知人へのお土産には、衣料品が喜ばれます。
 ウイグル女性は衣料品をプレゼントされたりしたりするのが一番嬉しそうです。
 相手の好みやサイズは二の次で、贈る贈られることに意義があるようです。

 従来は仕立用にと、反物が贈り物の定番でした。
 カシュガルでは仕立屋が多く手間賃も安いのですが、仕上がりが気に入らないお客と一悶着も多々あるようです。


 我が強いウイグルは、ちょっとしたことで争っており、私には理解できないことが多々あります。
 一見、すごく仲が良さそうに見えていても、それぞれに悪口を聞かされたりしますので閉口します。


 妻が日本滞在していた頃は、毎年、カシュガルへ里帰りするためのお土産準備で大変でした。
 毎回、日本から中国への郵送制限30㎏の衣類梱包を数箱送っていました。
 しかも、お土産は日本製品であることですので、中国製品が蔓延る日本では安価な日本製品探しは頭痛の種でした。

 昨年より息子がカシュガルで就学・成長することになったお陰で、お土産用の日本製衣料品探しに右往左往するのは一時中止となりました。



写真1: お土産を買う。最近、小綺麗な商店が多くなった 
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写真2: ロシア人から伝受したビスケット。10年くらい前からカシュガルで売られ始めた
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写真3: お土産を持って親戚宅へ。3月に入って降雪があった。春の兆し
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江上鶴也
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by oghuzkahan | 2007-02-09 03:54

(14)


…… 手 洗 い ……

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アッサラームアレイコム
 (あなたに平安を)


 ムスリム(イスラーム教徒)は食事前に手を洗わなければなりません。
 また、礼拝前の清め洗浄は当然のことながら、トイレの後は必ず手を洗わなければなりません。

 ムスリムにとって手を洗うことは、汚れを洗い落とす行為だけではなく、清めの儀礼でもありますので、手を洗わなければ、即ち、アッラーに背くことになります。

 ウイグルのお宅へ食事に招待されるか、食事時に訪問しますと、先ず、手を洗うように促されます。
 男性客には家人の男性が(女性客には女性が)水差しの水を注いでくれますので、両手で水を受けます。(※写真1)

 もてなしの意を込めて、水差しにはぬるま湯が入れてあります。
 手水湯を3回注いでくれますので、洗い終わると渡してくれるタオルで拭きます。

 ウイグルは滴が飛び散るのを嫌いますので、手を洗い終わると振って滴を落とす癖がある日本人は、ウイグル家庭訪問時には要注意です。


 日本ではインフルエンザやノロウィルスの感染予防に手洗い励行を呼び掛けていますが、カシュガルの感染症と言えばウィルス性肝炎が挙げられ、何年か置きに蔓延しています。

 肝炎流行時は学級閉鎖になったりしますので、衛生面に注意を喚起する、肝炎撲滅キャンペーンが繰り広げられます。(※写真2)
 もしかしたら、ウイグルの癌罹患で、肝臓癌の占める比率が高いかも知れません。

 20年位前の肝炎流行では、劇症肝炎で亡くなった患者もありました。
 当時、カシュガル中の飲食店が数日から1週間以上閉鎖になりましたので、ラマダーン(断食月、イスラム暦第9月)よりも街中がひっそりとしてしまい、私の好きなカワップ(串焼羊肉)も食べられずで、数日間、缶詰で飢えをしのいだ記憶があります。

 それ以来、保健局の指導で、食堂では食器の煮沸消毒や割り箸が義務付けられました。
 行政指導のキャンペーンは一時だけですから、割り箸は漸次一般化しましたが、面倒臭い食器の煮沸消毒はしなくなりました。

 15年位前、知り合いの日本語ガイドから頼まれて、ウイグル語から日本語に訳した、ツアー客用カシュガル案内に、「食事はホテルで、もしくは、必ずガイドに相談して下さい。バザールではガイドに相談無く飲食しないで下さい。ミネラルウオーターはガイドが用意します」などとありましたから、行政も外国人ツアー客が病気感染して問題になることを危惧しているのが分かりました。

 現在でも、感染して病気が蔓延するのが当然のような衛生状態ですから、環境問題同様に行政の積極的な指導と住民の意識改革が最重要です。



写真1: 部屋に通されると手を洗うように促される。手を振って滴を散らすのは厳禁
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写真2: 白壁のスローガン(注:写真の文言は肝炎撲滅スローガンではない)
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写真3: 名物のカワップ(串焼羊肉)。かつて肝炎流行のため数日間食べられなかった
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江上鶴也
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by oghuzkahan | 2007-01-31 19:59

(13)


…… アッサラームアレイコム ……

اَلسَّلامُ عَلَيْكُمْ

アッサラームアレイコム
 (あなたに平安を)


 ウイグルの挨拶は、ムスリム(イスラーム教徒)共通の、「アッサラームアレイコム」 か、
 英語表現 の Hello! How are you? の意味に近い 「ヤクシムシズ? カンダックアフワリンギズ?」 が一般的です。

 相手が知り合いでしたら、「お仕事は順調ですか。お家の方もお元気ですか」 などと、日本と同じような言葉が続きます。

 男性同士の場合は握手(元々、イスラームの習慣であったものが世界中に広まったとされる)、女性同士では互いに左右の頬を付け合う、異性との挨拶は軽い会釈、又は単に挨拶言葉を交わすだけです。

 日本の挨拶は、相手によって表現は様々ですが、お辞儀をしながら 「おはようございます。お寒いですね」 などのように、朝昼晩で違った表現をし、その後、時候と続くのが一般的でしょうか。

 単に挨拶行為である握手と儀礼の基本であるお辞儀とでは、人との交わり方も違っているはずです。
 生まれ育った環境から、挨拶時に握手をするかお辞儀をするかでは、人生や社会の成り立ちさえにも影響するかも知れないと考えるのは超飛躍過ぎでしょうか。

 言葉を交わすことを前提とした挨拶でしたら、「相手との距離を置き」 かしこまって他人行儀に見える日本式お辞儀より、「相手との距離を縮め」 間近に寄って相手の顔を見ながら、誰にでも平等で積極的に親しみを感じようとするような仕草の握手の方が、適当な気がします。

 かつて、「経済は一流、政治は三流」 と言われた日本ですが、日本が世界に冠たる技術立国・経済大国となったのも、政治面などで日本が国際標準に達していないのも、頑固で自他共に厳しく、相手との距離を一定に保つかのような仕草のお辞儀をするからでしょうか。

 カシュガルで当たり前のように握手をしながら挨拶を交わしていたのが、帰国した途端、お辞儀挨拶に変わります。

 お辞儀や敬語が美しい日本人のあるべき姿であるかのようですから、未だ、日本社会はフランクに握手挨拶できる土壌はありませんが、将来、外国系日本人の比率が増せば、私が思う日本社会になっていくかも知れません。

 日本の畳部屋でする正座しての挨拶は、ムスリムが礼拝時にアッラーへの忠誠を表す平伏に似たような仕草なのですが、ムスリムは人に対しては頭を床に着けるような仕草はしません。

 また、お客は挨拶時に帽子などの被り物を取りませんし、部屋の中でも被ったままです。

 新疆ウイグル自治区内のモスクでは、礼拝時に被り物が無ければ怒られるのですが、日本のモスクでは被り物が無い礼拝者の方が多く、無くても何も言われません。

 イスラーム教でも礼拝時に被り物が要る要らないがありますので、所変われば品変わると良く言ったものです。
 しかし、イスラームの挨拶 「アッサラームアレイコム」 はどこでも同じです。



写真1: アッサラームアレイコム。男性同士は握手
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写真2: アッサラームアレイコム。女性同士は左右の頬を付け合う
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写真3: アッサラームアレイコム。ヒゲ面の私は年配者と思われていた (85年)
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by oghuzkahan | 2007-01-25 03:28

(12)


…… 茶飲み茶碗 ……

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アッサラームアレイコム
 (あなたに平安を)


 ウイグル家庭では、たまに大勢の来客があります。

 断食明け祭や犠牲祭、結婚、誕生、割礼などの祝い、葬儀や供養等々のイスラーム教にまつわる諸々の行事、また前々回の(10)でご紹介しました、チャイ(親族縁者女性親睦会)や親族食事会等で大勢集まります。

 宴席(主にレストランでの結婚披露宴)の招待状は尽きません。

 私は日本では親類付き合いや友達付き合いの宴席は無いに等しいのですが、翻ってカシュガルでは宴席三昧に閉口するぐらいです。

 誘いを無視することはできない実情もありますし、「親類付き合い」 はウイグル社会の重要なキーワードでもありますから、気が進まなくても出席するようにしています。
 
 宴席で唯一の救いは、イスラーム教戒律で禁じられているアルコール類が出ないことです。
 私はアルコール類を嫌悪していますので、禁じてくださったアッラーに深謝します。


 日本の都市部では結婚披露宴や葬儀では会場に集まり、終われば現地解散する場合が多いのではないでしょうか。
 少子高齢化が進む日本では、親族縁者の集まりといえども、数人しか集まらないこともあるかと思います。
 普段の生活で家に大勢集まるとすれば、子供の誕生会くらいでしょうか。


 さて、宴席で最初に出されるのはお茶です。
 レストランではグラスですが、一般家庭では茶飲み茶碗に汲みます。

 茶飲み茶碗は大きめですので、お茶だけではなく、スープ、ご飯、ヨーグルトなどをよそったりもします。

 因みに、お茶は年中、熱いものが出ます。
 暑いからと言って、冷たいお茶は出ませんが、店売りのペットボトル飲料は冷えたものが売れます。
 
 妻宅には60個ほど茶飲み茶碗があります。
 その内の24個は、2005年8月に息子が割礼をしましたので、割礼祝いの 「日の出前礼拝後の振る舞い」 に要るからと買い足しました。

 購入前、底に英語表記でチェコスロバキアとありましたので、チェコとスロバキアに分離(93年)する前に、はるばる中央アジアを通って輸入されたのだろうかと、ラクダならぬトラックの隊商を想像していますと、妻が 「偽物の中国製に決まっているじゃないの」 と言下に打ち消してしまいました。

 一見、取っ手の無いティーカップのような形をしており、従来の景徳鎮製とは違った斬新なデザインですので、東欧(コピー?)の趣があるように感じました。

 デザインと値段(1個6.5元=約100円)で購入を決めました。
 1個6.5元に落ち着くまでには、恒例の店主と妻との丁々発止と激しいバトルがありました。

 ウイグルが輝いて見えるのは、礼拝、値段交渉、宴席での踊り、羊骨付き肉を頬張る時などでしょうか。

 昨年8月に妻の母親が亡くなり、死後40日までの毎週木曜日に催す 「追善供養の振る舞い」 では、茶飲み茶碗が足りずにご近所から借り受けました。

 茶飲み茶碗の利用として、高台で包丁替わりの 「ウイグルナイフ」 を研磨したり、高台の窪みに注いだ 「オスマ」 と言う植物の葉を搾った液汁を使ってする女性の眉毛化粧時に用いたりします。
  


写真1: 結婚披露宴招待状。左が表側
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写真2: 陶器店の茶飲み茶碗陳列 
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写真3: チェコスロバキア製と表記のある茶飲み茶碗
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江上鶴也
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by oghuzkahan | 2007-01-18 22:21

(11)


…… おもてなし ……

اَلسَّلامُ عَلَيْكُمْ

アッサラームアレイコム
 (あなたに平安を)


 ウイグルは早朝であろうが真夜中であろうが、いついかなる時でもお構いなくお客を迎えます。

 お客があれば、最初にチャイ(お茶)とナンでもてなすのがウイグル流です。

 それがために、ナンを欠かすことはあってはならぬことなのですが、たまに切らしている時に不意のお客があったりしますので、昼間ですとナン屋に走りますが、夜間ですとお隣に請うことになります。

 不意の来客があってもウェルカムで普段と変わらない心構えがあると言うか、逆の立場になりうる場合もありますので、お互い様と言うこともあってか、ウイグル特有の寛容さで迎えてくれます。

 カシュガルでは固定電話が普及しており、公衆電話も至る所にありますし、携帯電話を持っている人も多いのですが、事前に訪問の知らせをしないのが普通です。

 最近は、大した用事が無ければ電話で済ます場合もあるようですが、大した用事が無くても訪ねてはお茶を飲み世間話に花を咲かせるのが話し好きなウイグルの愉しみ方の一つです。

 日本人的常識や時間観念は通用せず、事前に訪問の知らせがあったとしても、時間通りは滅多に無い上に来ないことさえありますので、時間厳守を説くには時期尚早です。

 ただし、断食月や1日5回の礼拝などの宗教戒律は時間厳守されています。


 ウイグルの大らかで懐深いアバウトさが氾濫するカシュガルのウイグル家庭生活にどっぷりと浸かっていますと、私から見てどうでも良いと思われる事柄にさえも、必要以上に神経を使かっているかのような日本社会が奇異に思えます。

 カシュガル好きな日本からのリピーター旅行者でも、チャイとナンの素朴なおもてなしに感激したことで満足してしまい、今まで持っていた価値観を見直してしまうほどの強烈な精神的おもてなしを享受することなく帰路に就かれるようです。

 カシュガルは奥深く容易にはベールの下を覗かせてはくれません。

 衝撃的なおもてなしを受けられたとしても、電車やバスが数分遅れただけでイライラとしていたのが、「今日中に来たら良いじゃないか、ドンマイドンマイ」のような度量(=鈍感力?)の持ち主になれるかどうかは補償できません。



写真1: チャイとナンはおもてなしの基本
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写真2: ナンを買う。手前の円盤形ナン(アク・ナン)は大が1.5元、小が1元(15円)
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写真3: おもてなしを受ける。妻親戚宅居間
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by oghuzkahan | 2007-01-14 18:45

(10)


…… チ ャ イ ……

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 (あなたに平安を)


 ウイグルの生活と文化(7)で、ウイグル語のチャイは、「お茶」 を意味するとご紹介しました。
 
 「チャイに呼ぶ、チャイに呼ばれる」 などと、大きめな宴席に招待したりされたりする表現にも使われます。

 また、派生語に 「結婚の話し合いの席」 と言うような意味を持った表現があります。

 大凡の結婚話があった後、男性の母親と親戚女性数人が、意中の娘宅へ行ってする結婚承諾伺いを 「キチック・チャイ」 と称します。
 「キチック・チャイ」 で娘側が結婚承諾した後、娘宅でする結納・婚約披露を 「チョング・チャイ」 と称します。
 キチックは 「小さい」、チョングは 「大きい」 の意味です。

 私の場合は他所者であったため、上記の過程を経ずに挙式だけしました。

 日本の九州地方では結納後、「お茶見せ、お茶飲み、お茶開き」 などと称して、ご近所や親戚の女性を招待して結納披露のおもてなしをする所、「お茶講」 と称して宴を開く所、「お茶配り」と称してご近所にお茶を配る所などもあるそうです。

 婚姻儀式に係わる表現として、世界中で 「お茶」 が用いられているのが、案外、多いかも知れません。


 また、日本の頼母子講に似た、「チャイ」 と称する親睦・相互扶助組織があります。

 「チャイ」 組織は男女によって異なります。
 
 女性の場合は、親類縁者女性同士の 「チャイ」 で、月に1度、当番の家や当番が予約したレストランに集まってする親睦会です。
 ウルムチ(新疆ウイグル自治区首都)では、同郷女性親睦会の 「チャイ」 もあるそうです。

 男性の場合は、仕事仲間同士の 「チャイ」 のみで、親類縁者や同郷の 「チャイ」 はないそうです。

 男女の性差で 「チャイ」 組織様態が異なり、社会との関わり方に男女差があることが分かります。
 「男は外で仕事、女は内で家事」 と少し前の日本社会にあった考え方と似ています。
 
 「チャイ」 よって、地縁血縁の紐帯が更に強化されます。


 他所者の私から見ますと、ウイグルの親類縁者付き合いはひどく煩わしそうなのですが、ウイグル社会は地縁血縁で成り立っていると言っても過言ではないくらいですから、親類縁者との付き合いこそ最も重要視されていると言えます。

 妻は、昨年夏に亡くなった母親を継いで 「チャイ」 メンバーに加わり、今月で5回目です。
 妻の 「チャイ」 メンバーは15人で、毎月1人170元(食事代20元を含む)を会費として納めて、当番がお金を受け取るとのことです。

 1月4日は妻の当番日で、食事代を差し引いた2000元(約3万円)ほどを受け取ったと言うか、満期になったため戻って来たようなものです。

 妻が参加しているこの 「チャイ」 組織は、4月で一巡(15ヶ月)しますが、話し合った結果、解散せずにもう一巡させるらしいです。

 この 「チャイ」 メンバーは、持ち逃げができない信頼関係のある中高年の親類縁者同士であることがミソです。
  

 「茶話会」、「tea party」 などと称する、単なる親睦会でしたら世界中にありますが、「チャイ」 と同じような親睦・相互扶助組織も世界中に存在していることでしょう。

 チャイ(お茶)から派生した事柄から、民族や宗教が違っていても、人は歴史・社会的に繋がっているため、当然、考え方や行動様式はどこか似通っています。



写真1: お客を待つ。妻宅居間 
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写真2: 「チャイ」 の参加メンバー(妻親戚女性たち)
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写真3: 最近は、レストランでチャイ(親睦・相互扶助会)をするのが一般的。飲物は当然、チャイ(お茶)
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江上鶴也
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by oghuzkahan | 2007-01-04 22:36

(9)


…… 朝  食 ……


اَلسَّلامُ عَلَيْكُمْ


アッサラームアレイコム
 (あなたに平安を)


 薬茶以外にウイグルのお茶の飲み方としては、沸騰させた牛乳へ予め準備していたポットのお茶を適量加えて増量させ、塩を少量加えた 「エティケン・チャイ」 という、塩味のミルクティーがあり、主に朝食にします。

 ウイグルの伝統的な朝食は、「エティケン・チャイ」 と 「ナン」 です。
 湯飲みに注いだ 「エティケン・チャイ」 を飲みながら 「ナン」 を食べたり、ドンブリに 「ナン」 を小さく割って入れたものに、「エティケン・チャイ」 を注いで 「ナン」 を軟らかくして食べる 「ナン」 茶漬けが一般的です。

 ウイグルと同じ新疆ウイグル自治区内に居住するトルコ系のカザフやキルギス、またモンゴル系民族も同じような飲み方をします。

 インスタントの 「エティケン・チャイ」 も市販されています。
 癖になる塩味のミルクティーは、日本でも受けるかも知れません。
 
 因みに、硬い錠剤であっても飲み込むからか日本語、ウイグル語ともに 「飲む」 ですが、ヨーグルト、茶漬け、ラーメンなど水気のある食べ物は、日本語では 「食べる」 と表現しますが、ウイグル語では 「飲む」 となります。
 
 「エティケン・チャイ」 に無くてはならない牛乳は、早朝、牛乳屋が売りに来ます。
 牛乳屋は路地に来る最初の物売りで、「スーット、スーット(牛乳、牛乳)」 と野太い売り声を掛けながら家々の門扉の前当たりで待っています。

 牛乳屋のおじさんたちは、日の出前礼拝を終えてから直ぐに仕事に就きますから、妻宅のある路地には、毎朝6時過ぎ頃2、3人来ます。
 牛乳屋とは契約してはいませんが、毎日同じ牛乳屋から買っており、売り声で判別つきますので、いつものおじさんの売り声がしたらナベを持って出て行きます。

 牛乳は、1㎏=2元4角(約36円)です。

 ウイグル語では、「牛乳1キロいくらですか」 と、牛乳、食用油、ガソリンなどは、体積単位のミリリットルやリットルではなく、質量単位のグラムやキログラムで売買、表現します。

 病弱な妻は、毎日、ラクダ乳(250g、10元=約150円)を、内蔵強化や毒素除去に効果があるからと飲用しています。

 ラクダ乳は、搾乳後数時間以内でしたら甘味があり飲み易いのですが、半日も経ちますと酸っぱくなります。
 妻宅へは配達してもらっていますが、搾乳後直ぐが効果があるとのことで、ラクダ農場へ行かれる方もあるようです。

 ラクダ乳は、牛乳に比べてビタミンCが3倍あり、鉄分、不飽和脂肪酸、ビタミンBなども豊富に含み、また血糖値を下げる効果もあるとのことです。

 ウルムチ(新疆ウイグル自治区首都)で暮らしていた頃は、毎朝、近くのバザールへビニール袋入り牛乳を買いに行っていました。

 12月下旬、ウルムチの最低気温は零下20℃以下にもなりますので、注意しておかないと牛乳が凍ってしまいます。
 カシュガルでも零下10℃以下になりますので、牛乳屋は毎朝神経を使っているはずです。



写真1: 塩味が美味しい 「エティケン・チャイ」
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写真2: 朝食はいつも 「エティケン・チャイ」。妻宅では夏季は中庭で朝食を摂ることが多い
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写真3: 毎朝、同じ牛乳屋から買う
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江上鶴也
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by oghuzkahan | 2006-12-18 17:29