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…… 焼 き 物 ……

اَلسَّلامُ عَلَيْكُمْ

アッサラームアレイコム
 (あなたに平安を)



 ちょうど22年前の85年春、砂が飛び交い視野もおぼろげなカシュガルで、すばらしい焼き物と出会い感激しました。

 日本の民芸運動家の故柳宗悦氏(1889~1961。無名職人が作る大衆的な日用雑貨品を工芸品として発掘、収集、紹介、評価した)も、素朴さ満点なカシュガルの焼き物にきっと興味をもたれたことでしょう。

 ただ、カシュガルの焼き物にも、雑なところが散見されますので、仕事の取り組み方などに関して、「もっと職人魂を持って仕事に臨みなさい」 などと叱咤されるべきなのですが、聞く耳持たず、逆に喧嘩を売る気かと反駁されること必至ですので、カシュガルでは高飛車に意見するなかれが暗黙の了解です。

 もうちょっと頑張って仕事してくれるならば、世界的に評価されるようなすばらしいものがいくらでもあるのに、と無責任な他所者が声を大にしても、当人達は知らぬ顔です。

 食堂の味もしかりで、ものすごく美味しいラグメン(皿うどん)を味わって感激し、次の日も同じ注文をしてみますと、同じ調理人が作ったにもかかわらず、全く違った味に失望することが度々あります。

 よそ目には太鼓判を押せるほどの好い加減なカシュガル・ウイグルの生き方ですが、頑なであるからこそ注目もされず、外敵も競合もなく、まるで遺存種のごとく悠久の歴史を生き延び、また周りを気に掛けることもなく堂々と未来に立ち向かっているかのごとくですから、ご立派です。

 カシュガルには、トルファンのように誇れる歴史的観光名所はほとんどありません。
 カシュガル最大の見せ場であり魅力は、カシュガル・ウイグルの生き方なのかも知れません。


 さて、春の砂霞に突然、目の前に出現した厚みのある粗っぽい作りのカシュガルの焼き物は、一瞥しただけで、きっと焼成温度も低くて、割れ易いのだろうと想像に難くありませんでした。

 しかし、この焼き物との邂逅に気を良くしてしまい、早く自分のものにして終日、眺めていたい衝動に駆り立てられてしまいました。

 値引き交渉もしないまま、大きめの茶碗とドンブリを2個ずつ買い求めました。
 確か1個1元(当時の1元は約90円)ほどでしたから、今から思えば少しぼられていたはずです。
 現在の価格は、1個5元(=約80円)から10元です。


 因みに、昔はぼるにしても、大体、倍ぐらいでしたが、今では10倍100倍と質が悪くなっています。
 特に適正価格の分からない外国人には、法外な値段を吹っ掛けるだけ吹っ掛けてやろうと虎視眈々と狙っています。
 もっとも、購入価格に関しては買い手の自己責任ですから、取引後にぼられたと言うのもおかしな話です。


 自分のものになった焼き物を手にして眺めては、嬉しくてすごく得したような気分に浸り、挙げ句の果てには、カシュガルに来たことの意義をこの焼き物に求めようとさえしました。

 後日、そんなに衝撃は無かったものの、それぞれ1個ずつが割れてしまいましたので、思った通りのもろさでした。
 運良く割れずに残ったものは、22年経った今でも大事に保存してあります。



写真1: 知り合いの焼き物屋主人と話をする (86年)
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写真2: 日曜バザールの簡易食堂の姉妹。当時は焼き物が使われていた (85年)
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写真3: 割れずに残った85年春購入どんぶり。22年経つ
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江上鶴也
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by oghuzkahan | 2007-04-03 17:31
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