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…… アルファルファ若葉ワンタン ……

اَلسَّلامُ عَلَيْكُمْ

アッサラームアレイコム
 (あなたに平安を)




 カシュガルの春の風物詩は、アルファルファ若葉ワンタンで、水餃子と同じくスープなしで食べます。

 作り方は、① アルファルファの若葉をみじん切りにし、② 油少量の弱火で炒めた味付けなしの具を、③ 餃子皮よりも薄い皮で小さく包み、④ 水餃子と同じように煮ます。 

 水餃子と同じく、黒酢に唐辛子を少量加えたものにつけて食べます。

 カシュガルっ子は、このアルファルファ若葉ワンタンを食べずして、春を迎えられないそうです。


 アルファルファの日本名はムラサキウマゴヤシ(紫馬肥やし)で、中央アジア原産です。
 マメ科の植物で、家畜に与える飼料作物として栽培され、夏に濃紫色から白色の蝶形花を付けます。

 アルファルファは、アラビア語の al-fisfisha (全ての食物の父)が語源と言われています。

 また、日本では 「糸モヤシ」 とも言われており、食物繊維が豊富で、栄養価が高く、ビタミンC、カリウムなどが含まれ、スプラウト(新芽野菜、モヤシ)の状態でサラダなどに使われているとのことです。


 今年はカシュガルも暖冬でしたので、3月初旬からアルファルファ若葉が出回り始めました。
 4月初旬の今でもまだ売っているのですが、もう旬の味ではないとのことです。
 出始めは1㎏=40元(約640円)でしたが、4月2日現在は1㎏=2元(約16円)です。

 アルファルファ若葉は春先にワンタンの具にするだけで、新芽のモヤシ状態で食べることはありません。

 ウイグルがサラダを常食するようになれば、アルファルファ・モヤシがもっとも身近な生野菜となるのではと思います。

 ウイグル語で、アルファルファを 「ビダ」 と言いますが、アルファルファ若葉は 「キョック」 と言います。

 キョックは、「青色、天空、緑草」 と言う意味です。

 「守護神・蒼き狼に導かれ国が興る。死後の魂は鳥となって蒼穹を翔る。天の慈雨が新緑を生み畜養し民を養う」
 こんなイメージのウイグルの自然観を表す 「キョック」 は、モンゴル高原で興った遊牧騎馬民族の先祖から綿々と引き継がれてきたものではと、アルファルファ若葉の匂いを嗅ぎながら夢想に耽っています。

 ですから、「キョック」 は、青々とした空や水や草のみならず、生死や森羅万象を意味していたのかも知れません。

 案外、語呂合わせで、アルファルファ若葉の 「キョック」 を食べるのではないかなと思ったりしています。

 日本の七草粥のように無病息災を祈って食べることでも無いようです。

 一般的には、冬中、新鮮な野菜を摂ることがなかったため、新緑の力強い息吹を取り入れて活力を付ける意味で、春一番に若葉を出すアルファルファを食べるとのことです。

 しかし、(17)でご紹介した、冬でもハウス栽培の新鮮野菜が食べられるようになった今では、春一番の野菜としてのアルファルファが疎んじられるようになるかも知れません。

 そんなことで、いつまで春の風物詩としてアルファルファ若葉ワンタンが受け入れられるのか興味があります。

 因みに、中国語でワンタンを 「馄饨」 と書き、「馄饨」 の呉方言(上海方言)が、日本語の 「うどん(饂飩)」 のルーツだそうです。

 折角、作ってくれた妻には悪いのですが、草そのものの味がするアルファルファ若葉ワンタンを一口食べただけで吐き気がします。

 私の口には合わないのですが、春はアルファルファ若葉ワンタンからと、いつまでもウイグルの春の風物詩であって欲しいと願います。




写真1: 春の風物詩、アルファルファ若葉 「キョック」 バザール
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写真2: みじん切りにしたものを、油少量の弱火で炒めた味付けなしの具を包む
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写真3: 石炭ストーブで煮炊きできるので冬中重宝する
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江上鶴也
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by oghuzkahan | 2007-04-03 04:08
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