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…… 氷 ……

اَلسَّلامُ عَلَيْكُمْ

アッサラームアレイコム
 (あなたに平安を)


 夏の甲子園高校野球大会の名物は、試合観戦でボルテージが上がった身体に束の間の冷気を与える、ビニール袋に割った氷を入れストローを挿して袋口を輪ゴムで止めた、「かち割り」 です。
 シロップ入りの甘い 「かち割り」 もあるとのことです。


 カシュガルでも 「かち割り氷」 を使った、「ドーグゥ」 又は 「ドグァップ」 と言われる夏の風物詩のような飲料があります。

 夏季はあちらこちらでドーグゥ屋が営業しており盛況です。

 「ドーグゥ」 は、ドンブリに「かち割り氷」を入れてすすいだ後、ヨーグルト数匙と水を加えた酸味のものと、これに蜂蜜を加えて甘くしたものがあります。

 炎天下に酸味の冷たい 「ドーグゥ」 を味わうのは格別です。

 しかし、今や 「ドーグゥ」 に代わる冷えたペットボトル飲料が席巻していますし、昔ながらの製法で作るアイスクリームの方が好まれています。

 時代とともに嗜好に変化がありますので、「ドーグゥ」屋は、早晩、カシュガルから姿を消す運命と思われます。

 冷蔵庫で製氷すれば簡単に家庭で 「ドーグゥ」 を味わうことができますので、お茶代わりに 「ドーグゥ」 でおもてなしするようになったり、ペットボトルの 「ドーグゥ」 が売り出されるようになったりするかも知れません。

 「ドーグゥ」 に使われる氷は、冬に凍結した池の水です。
 真冬、池の分厚く張った氷を切り出し、その氷塊をロバ車で搬送して氷室に保管し、夏になると 「ドーグゥ」 用に使われています。
 
 5月初旬、カシュガル郊外のアトシュから搬送して来たという氷運搬人に話を聞きました。
 アトシュの氷室では2月から9月まで蓄氷されるとのことです。
 現在でも池の氷は、「ドーグゥ」やアイスクリーム作りに需要があるとのことでした。

 「ドーグゥ」好きに言わせると、「ドーグゥ」は池の氷に限ると味の違いを主張します。

 2月から9月の氷保存期間が終わると氷室(野菜・果物保存用室兼用)には秋に収穫したメロン、スイカや根菜類を保管し、冬・春に販売します。   

 冬のスイカと言えば、妻が息子を身ごもっていた頃、スイカが食べたいと言い出しましたので、仕方なく零下のウルムチでスイカを探し求めて持ち帰ったり、寒空の中、バザールで妻が歯をガチガチ言わせながらスイカを食べたりしていたのを想い出します。

 当然ながら、池の氷は不純物が混入しており、その富栄養氷を 「ドーグゥ」 にすると、氷に土が閉じこめられているのが見えました。
 そのヨーグルト味の 「ドーグゥ」 で渇きを癒しながらも、氷が溶けてドンブリの底に溜まっている土を見ると、肝炎が感染しても当然だと思いました。

 今では、衛生面から池の氷ではなく冷凍庫で製氷したものを使用するようにとの通達があるそうです。
 将来的には懐かしい土混じりの氷は 「ドーグゥ」 に入らなくなるかも知れません。

 冷蔵庫も一般化しましたが、お茶や水を冷やしたり、冷凍庫で氷を作ったりすることはありません。
 妻宅では冷凍庫は羊肉専用なのですが、羊肉はその都度、バザールで新鮮なものを買いますので、冷凍庫には何も入っていません。

 また、メロンやスイカも冷やして食べたりしませんが、余ったものは冷蔵庫に保存します。

 ウイグルは、身体が冷えることを嫌いますので、極力、冷えたものを飲食しないのですが、なぜ 「ドーグゥ」 を飲むようになったのか不思議です。




写真1: ドーグゥ屋 日曜バザール(6/3)
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写真2: カシュガル市内の凍結した池から切り出した氷 (86年)
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写真3: カシュガル郊外アトシュから運んできた氷 (5/3)
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江上鶴也
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by oghuzkahan | 2007-03-13 13:35
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