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…… チ ャ イ ……

اَلسَّلامُ عَلَيْكُمْ

アッサラームアレイコム
 (あなたに平安を)


 ウイグルの生活と文化(7)で、ウイグル語のチャイは、「お茶」 を意味するとご紹介しました。
 
 「チャイに呼ぶ、チャイに呼ばれる」 などと、大きめな宴席に招待したりされたりする表現にも使われます。

 また、派生語に 「結婚の話し合いの席」 と言うような意味を持った表現があります。

 大凡の結婚話があった後、男性の母親と親戚女性数人が、意中の娘宅へ行ってする結婚承諾伺いを 「キチック・チャイ」 と称します。
 「キチック・チャイ」 で娘側が結婚承諾した後、娘宅でする結納・婚約披露を 「チョング・チャイ」 と称します。
 キチックは 「小さい」、チョングは 「大きい」 の意味です。

 私の場合は他所者であったため、上記の過程を経ずに挙式だけしました。

 日本の九州地方では結納後、「お茶見せ、お茶飲み、お茶開き」 などと称して、ご近所や親戚の女性を招待して結納披露のおもてなしをする所、「お茶講」 と称して宴を開く所、「お茶配り」と称してご近所にお茶を配る所などもあるそうです。

 婚姻儀式に係わる表現として、世界中で 「お茶」 が用いられているのが、案外、多いかも知れません。


 また、日本の頼母子講に似た、「チャイ」 と称する親睦・相互扶助組織があります。

 「チャイ」 組織は男女によって異なります。
 
 女性の場合は、親類縁者女性同士の 「チャイ」 で、月に1度、当番の家や当番が予約したレストランに集まってする親睦会です。
 ウルムチ(新疆ウイグル自治区首都)では、同郷女性親睦会の 「チャイ」 もあるそうです。

 男性の場合は、仕事仲間同士の 「チャイ」 のみで、親類縁者や同郷の 「チャイ」 はないそうです。

 男女の性差で 「チャイ」 組織様態が異なり、社会との関わり方に男女差があることが分かります。
 「男は外で仕事、女は内で家事」 と少し前の日本社会にあった考え方と似ています。
 
 「チャイ」 よって、地縁血縁の紐帯が更に強化されます。


 他所者の私から見ますと、ウイグルの親類縁者付き合いはひどく煩わしそうなのですが、ウイグル社会は地縁血縁で成り立っていると言っても過言ではないくらいですから、親類縁者との付き合いこそ最も重要視されていると言えます。

 妻は、昨年夏に亡くなった母親を継いで 「チャイ」 メンバーに加わり、今月で5回目です。
 妻の 「チャイ」 メンバーは15人で、毎月1人170元(食事代20元を含む)を会費として納めて、当番がお金を受け取るとのことです。

 1月4日は妻の当番日で、食事代を差し引いた2000元(約3万円)ほどを受け取ったと言うか、満期になったため戻って来たようなものです。

 妻が参加しているこの 「チャイ」 組織は、4月で一巡(15ヶ月)しますが、話し合った結果、解散せずにもう一巡させるらしいです。

 この 「チャイ」 メンバーは、持ち逃げができない信頼関係のある中高年の親類縁者同士であることがミソです。
  

 「茶話会」、「tea party」 などと称する、単なる親睦会でしたら世界中にありますが、「チャイ」 と同じような親睦・相互扶助組織も世界中に存在していることでしょう。

 チャイ(お茶)から派生した事柄から、民族や宗教が違っていても、人は歴史・社会的に繋がっているため、当然、考え方や行動様式はどこか似通っています。



写真1: お客を待つ。妻宅居間 
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写真2: 「チャイ」 の参加メンバー(妻親戚女性たち)
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写真3: 最近は、レストランでチャイ(親睦・相互扶助会)をするのが一般的。飲物は当然、チャイ(お茶)
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江上鶴也
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by oghuzkahan | 2007-01-04 22:36
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