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…… 雨  後 ……


اَلسَّلامُ عَلَيْكُمْ


アッサラームアレイコム
 (あなたに平安を)


 ふた昔前、雨の日、私が日本から持って来ていた折りたたみの雨傘を珍しがられました。
 「カシュガルでは強い雨も長雨も降らないから、傘は要らないのだ」 と言われました。
 ただ、土道がぬかるみになるのでゴム長靴があれば便利なのだがと思いました。

 妻が日本滞在中に、「日本は雨が多いから木の葉も綺麗なのだ」 とよく言ったものです。

 カシュガルの木の葉は、粉末のような土埃がこびり付いており、光合成するのも困難であるかのようで痛々しいのですが、もしかしたら、土埃が葉の表面を乾燥の脅威から守ってくれているのかも知れません。 

 カシュガルでは雨は夏に多く、カラカラに乾いた大地を潤してくれる、まさに天の恵みです。
 大気の砂埃を洗い落とし、束の間の湿り気と澄んだ空気をもたらしてくれる雨は大歓迎です。
 中庭の植木に水をやる手間も省けます。

 ところが、カシュガルの街中で暮らしていますと、その干天の慈雨が時としてうっとうしいこともあります。

 雨後の路面に雨が溜まっていますと、始末するのにいつもの掃除より労力も人手も要ります。
 力仕事でもありますので男手がある方が仕事がはかどりますし、子供も頼りになりますので、家族総出の労働です。
 もし、老人所帯や母子家庭などで人手がなくても、イスラーム教も町内制度も相互扶助が周知徹底されていますので、ご近所が助け船を出してくれます。

 「雨降って地固まる」 ならぬ、「雨降って地域結束なる」 です。

 助け合いの精神は、ムスリム(イスラーム教徒)の義務の一つであり、善行を積むことにもなりますので、住んでいる地域だけに限らず、困った人を助けるのは当然のこととされています。


 カシュガルのウイグル社会の根底にあるものは、地縁血縁と信仰だと思います。

 今日の日本のように人との関わり方も信仰心も薄れている社会で育った人間との違いは、何か大事にぶつかった時の対処の仕方で分かると思います。

 例えば、商業の民でもあるウイグルは、代々若くして異国へ出向いて居を構え、営々と商売に励み、商業ネットワークの拠点を築いて故国の本拠地との連帯を作り上げていたようですが、裸一貫の異国人相手商売とネットワーク拡大は、まさにウイグルの生育環境に因り獲得した潜在能力を上手く引き出せた結果なのだろうと考えられます。
 
 黙々と雨の後始末を続けるウイグルを傍観していますと、彼らのまるで天賦であるかのような商才は、日々の生活の積み重ねにより身に付いたものだ、とつくづくそう思います。



写真1: 雨の翌日早朝は大変、いつもの掃除よりも労力を使う
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写真2: コンクリート六角板を剥ぐにはかなりの力仕事になる
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写真3: 何気ない労働が地域の結束を固める 
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江上鶴也
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by oghuzkahan | 2006-12-03 22:03
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