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…… 路地の運命 ……


اَلسَّلامُ عَلَيْكُمْ


アッサラームアレイコム
 (あなたに平安を)




 路地居住区の各戸門扉を入ると、こぢんまりとした中庭の空間が広がります。
 中庭は、接客する場や、食事や歓談や遊びをする憩い・癒しの場になります。

 そこは、狭いながらもイスラーム伝統建築としての空間が色濃く醸し出されており、何かしらゆったりとしたゆとりのようなものが感じられます。
 
 これこそが悠久の歳月が生み出した文化なのだなと一人感じ入っています。
 
 この中庭のすばらしさは、ウイグルの「婿」となりカシュガルの妻宅住まいをするようになってから実感できました。
 ただし、この空間を身近に感じられるようになるまではかなりの時間を要しました。

 数年前のことです。
 妻宅がある路地居住区の一部を区画整備を理由に取り壊すとのお達しがありました。

 最近、上海で日本企業が突然、立ち退きを要求されたとのニュースがありましたが、中国では突然の通達で有無を言わさぬ強制立ち退きが多々散見され、土地を巡る地方政府と住民間の衝突が頻繁に起こっています。

 妻は、どうせ立ち退きになるのならば家を修理しても無駄だし、この先どうなるのかしらとしばらく様子見していました。

 下手に権力者に盾突いて恨みを買い、挙句の果てに完膚なきまでも報復されてしまうような目に遭うよりも、泣き寝入りした方が無難なこともあります。

 どうしても納得がいかない場合は、地方の裁判所に訴えても無駄に終わることが明らかですので、北京の中央政府へ陳情に出向き正義を問います。

 それで、連綿と積み重ねてきた愛着のある路地生活を奪われてしまう危機感が、住民を猛烈な抗議と直訴に駆り立てました。
 路地住民の陳情が運良く北京の中央政府を動かしたとのことです。
 
 その結果、取り壊しは中止となり、辛うじて路地生活文化を守り続けていけることになりました。

 安堵した路地居住区の住民たちは、堰を切ったように新築、リフォーム、下水工事などをしだしました。
 同様に妻もキッチンやトイレ・シャワー室を作り直しました。

 都市化への土地の有効利用、災害予防、景観等々の理由で、いずれは狭い路地も取り壊されて高層集合住宅林立へと変貌するのではないかと危惧を抱いていますが、杞憂であって欲しいと切に願っています。

 来年3月に全国人民代表大会(=中国国会)で、物権法(私有財産不可侵の権利制定)が成立する見込みです。
 今までのように地方行政が権力に物を言わせて、問答無用で土地収用することはできなくなるとの朗報があります。




写真1: 中庭で食事の準備をする妻
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写真2: 中庭から2階を見上げる息子
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写真3: 妻宅近くにある町内会モスクのリフォーム
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江上鶴也
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by oghuzkahan | 2006-11-20 01:52
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